先日、ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」や「お問い合わせ窓口」などの表記は、「問い合わせ」と「問合せ」のどちらが正しいのか、という質問をクライアントからいただいたので、判断の拠り所となりそうな資料を整理しました。
一般的には「問い合わせ」
新聞記事で使用する漢字、仮名遣い、用語、表記などについて定められ、記者や編集者に広く用いられている、共同通信社の「記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集」には「問い合わせ」と書かれています。
新聞や広告だけでなく、多くのウェブサイトでもこちらの表記が用いられており、デファクトスタンダード(事実上の標準)化しているといっても差し支えないため、一般の文章(後述する公用文以外の文章)では「問い合わせ」と表記するのが適切と考えられます。
なお、一般のウェブサイトで「問合せ」と表記しても誤りではないし、実際に大手企業のウェブサイトでも「問合せ」と表記している会社はたくさんあります。重要なのは表記が統一されていることです。
公用文では「問合せ」
一方、公用文の場合は、内閣訓令「公⽤⽂における漢字使⽤等について」の中にある、「2 送り仮名の付け方について」に準じて、「問合せ」と表記するのが適切とされています。資料内の該当する部分を以下に抜粋します。
複合の語(中略)のうち、活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については、(中略)送り仮名を省くものとする。なお、これに該当する語は、次のとおりとする。
- 明渡し
- 預り金
- 言渡し
- 入替え
- 植付け
- 魚釣用具
- 受入れ
- 受皿
- 受持ち
- 受渡し
- 渦巻
- 打合せ
- 打合せ会
- 打切り
- 内払
- 移替え
- 埋立て
- 売上げ
- 売惜しみ
- 売出し
- 売場
- 売払い
- 売渡し
- 売行き
- 縁組
- 追越し
- 置場
- 贈物
- 帯留
- 折詰
- 買上げ
- 買入れ
- 買受け
- 買換え
- 買占め
- 買取り
- 買戻し
- 買物
- 書換え
- 格付
- 掛金
- 貸切り
- 貸金
- 貸越し
- 貸倒れ
- 貸出し
- 貸付け
- 借入れ
- 借受け
- 借換え
- 刈取り
- 缶切
- 期限付
- 切上げ
- 切替え
- 切下げ
- 切捨て
- 切土
- 切取り
- 切離し
- 靴下留
- 組合せ
- 組入れ
- 組替え
- 組立て
- くみ取便所
- 繰上げ
- 繰入れ
- 繰替え
- 繰越し
- 繰下げ
- 繰延べ
- 繰戻し
- 差押え
- 差止め
- 差引き
- 差戻し
- 砂糖漬
- 下請
- 締切り
- 条件付
- 仕分
- 据置き
- 据付け
- 捨場
- 座込み
- 栓抜
- 備置き
- 備付け
- 染物
- 田植
- 立会い
- 立入り
- 立替え
- 立札
- 月掛
- 付添い
- 月払
- 積卸し
- 積替え
- 積込み
- 積出し
- 積立て
- 積付け
- 釣合い
- 釣鐘
- 釣銭
- 釣針
- 手続
- 問合せ
- 届出
- 取上げ
- 取扱い
- 取卸し
- 取替え
- 取決め
- 取崩し
- 取消し
- 取壊し
- 取下げ
- 取締り
- 取調べ
- 取立て
- 取次ぎ
- 取付け
- 取戻し
- 投売り
- 抜取り
- 飲物
- 乗換え
- 乗組み
- 話合い
- 払込み
- 払下げ
- 払出し
- 払戻し
- 払渡し
- 払渡済み
- 貼付け
- 引上げ
- 引揚げ
- 引受け
- 引起し
- 引換え
- 引込み
- 引下げ
- 引締め
- 引継ぎ
- 引取り
- 引渡し
- 日雇
- 歩留り
- 船着場
- 不払
- 賦払
- 振出し
- 前払
- 巻付け
- 巻取り
- 見合せ
- 見積り
- 見習
- 未払
- 申合せ
- 申合せ事項
- 申入れ
- 申込み
- 申立て
- 申出
- 持家
- 持込み
- 持分
- 元請
- 戻入れ
- 催物
- 盛土
- 焼付け
- 雇入れ
- 雇主
- 譲受け
- 譲渡し
- 呼出し
- 読替え
- 割当て
- 割増し
- 割戻し
文化庁の報告書「新しい『公用文作成の要領』に向けて」にも書かれていますが、現在において、「公用文」の明確な定義はないため、公的機関が公開しているウェブサイトのコンテンツを「公用文」と解釈するかどうかは判断が分かれるところだと思います。
実際、各省庁のウェブサイトにおいても、文化庁は「御意見・お問合せ」と表記されていますが、農林水産省は「お問い合わせ」と書かれています。また、厚生労働省やデジタル庁に至っては、そもそも表記の統一ができておらず、ひとつのページ内で「お問い合わせ」と「お問合せ」が混在している状況です(2024年4月6日時点)。民草には計り知れない高尚な理由があって使い分けているのかもしれませんが、そうでないとすれば少し残念です(特にデジタル庁)。
